屋内消火栓設備の設置が必要と言われたものの、ポンプや水源、配管の工事費用に悩む建物オーナーや管理者の方は少なくありません。そこで選択肢になるのが屋内消火栓の代替設備として認められているパッケージ型消火設備です。この記事では、パッケージ型消火設備の仕組みと使い方、設置基準、1型と2型の違い、価格相場と耐用年数までをまとめて解説します。
パッケージ型消火設備とは?屋内消火栓の代替となる仕組みと使い方
パッケージ型消火設備の仕組み
パッケージ型消火設備とは、ノズル・ホース・消火薬剤貯蔵容器・加圧用ガス容器を一つの箱(キャビネット)に収納した消火設備です。消防法施行令第29条の4にもとづく平成16年総務省令第92号と消防庁告示第12号で技術基準が定められており、一定の条件を満たす建物では屋内消火栓設備の代わりに設置できます。
屋内消火栓が水源・消火ポンプ・配管を建物全体に張りめぐらせるのに対し、パッケージ型消火設備は本体内の消火薬剤を加圧用ガスで押し出す自己完結型です。そのため次のような特長があります。
- 水源や消火ポンプ、非常電源が不要で大がかりな配管工事がいらない
- 本体を置いて表示灯の電源をとるだけなので既存建物にも後付けしやすい
- 強化液などの消火薬剤を使うため、水より少ない量で消火できる
一方で、火災を感知して自動で放射するパッケージ型自動消火設備(スプリンクラーの代替となる別の設備)とは異なり、人が操作して初めて消火できる点は屋内消火栓と同じです。
使い方の手順
操作は屋内消火栓とほぼ同じで、1人でも扱えるように設計されています。
- キャビネットの扉を開ける
- 加圧用ガス容器のバルブを全開にする
- ホースを引き出して火元まで運ぶ
- ノズルのコックを開いて消火薬剤を放射する
- 炎の根元を狙い、手前から奥へ掃くように放射する
ホースが細く軽いため、1号消火栓より扱いやすく2号消火栓に近い操作感です。放射できる時間は限られているため、バルブを開けてから火元に向かうのではなく、ホースを伸ばしてから放射を始めるのがコツです。
設置基準|設置できる建物と地階・無窓階の制限
設置できる防火対象物
パッケージ型消火設備は、消防法施行令別表第一のうち屋内消火栓の設置義務がある用途の多くで採用できますが、用途・階数・延べ面積に上限があります。
| 項目 | 設置できる条件 |
|---|---|
| 用途 | 別表第一(1)項から(12)項、(15)項、これらを含む(16)項の複合用途部分 |
| 階数と延べ面積 | 耐火建築物か否かで異なる(詳細は次章の比較表) |
| 危険物関係 | 指定可燃物を指定数量の750倍以上貯蔵・取り扱う部分は設置不可 |
設置できない場所
次の場所には設置できないため、屋内消火栓設備など他の設備で対応する必要があります。
- 地階と無窓階(避難や消火活動に有効な開口部が足りない階のこと)
- 火災のときに著しく煙が充満するおそれのある場所
- (13)項の自動車車庫・駐車場・航空機格納庫
- (14)項の倉庫
- (16の2)項の地下街、(16の3)項の準地下街
地階や無窓階が設置できないのは、操作する人が煙の中で消火活動を続けることが難しく、ホースの短いパッケージ型では安全に消火しきれないおそれがあるためです。低層階は設置できても、地階だけ屋内消火栓が必要になるケースもあるので、建物全体での計画が欠かせません。
設置位置と表示の基準
- 本体は周囲温度が40度以下で温度変化が少なく、直射日光や雨水がかかりにくい場所に置く
- 本体の直近に赤色の表示灯と「パッケージ型消火設備」の標識を設ける
- 取り扱い方法や消火薬剤の種類を見やすく表示する
設置工事は甲種第1類から第3類のいずれかの消防設備士が行い、工事前に所轄消防署へ着工届、完了後に設置届を提出します。
1型と2型の違い|防護面積・階数・歩行距離を比較
比較早見表
1型(Ⅰ型)と2型(Ⅱ型)の違いは、放射できる消火薬剤の量と性能が異なり、その結果として設置できる建物の規模と1台でカバーできる範囲が変わるという点です。
| 比較項目 | 1型(Ⅰ型) | 2型(Ⅱ型) |
|---|---|---|
| 耐火建築物の場合 | 地階を除く6階以下、延べ面積3,000平方メートル以下 | 地階を除く4階以下、延べ面積1,500平方メートル以下 |
| 耐火建築物以外の場合 | 地階を除く3階以下、延べ面積2,000平方メートル以下 | 地階を除く2階以下、延べ面積1,000平方メートル以下 |
| 本体までの水平距離 | 各部分から20m以下 | 各部分から15m以下 |
| 1台あたりの防護面積 | 850平方メートル以下 | 500平方メートル以下 |
| 薬剤量と放射性能 | 多い・強い | 少ない・小規模向け |
耐火建築物とは、柱・梁・床・壁などの主要構造部が一定時間火災に耐えられる構造の建物のことで、鉄筋コンクリート造の建物が代表例です。
配置の考え方
水平距離とは、階の各部分から本体までを図面上で直線的に測った距離です。歩行距離ではなく水平距離で規定されているため、廊下や間仕切りを回り込む実際の移動距離はこれより長くなります。設計時は次の2つを同時に満たすよう台数を決めます。
- 階のどの場所からも1型なら20m、2型なら15m以内に本体がある
- 1台が受け持つ床面積が防護面積の上限を超えない
たとえば1フロア600平方メートルの耐火建築物であれば、1型なら1台で防護面積を満たせる可能性がありますが、2型は防護面積が500平方メートルまでのため最低2台が必要になります。
どちらを選ぶべきか
- 建物規模が2型の上限に収まり、フロア形状が単純なら2型で台数を抑えられる
- 延べ面積が1,500平方メートルを超える、または5階以上の耐火建築物は1型一択
- フロアが細長く水平距離を満たしにくい場合は、1型にして台数を減らすほうが総額を抑えられることもある
価格相場と耐用年数|設置費用を抑えるポイント
価格の目安
価格はメーカーや消火薬剤の種類、設置条件で変わりますが、おおよその相場は次の通りです。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 2型の本体価格 | 1台あたり20万円から40万円程度 |
| 1型の本体価格 | 1台あたり30万円から60万円程度 |
| 設置工事費(表示灯配線・標識・届出含む) | 1台あたり5万円から15万円程度 |
屋内消火栓設備を新設すると、消火ポンプ・水槽・配管・非常電源で数百万円から1,000万円を超えることも珍しくありません。パッケージ型消火設備なら数台設置しても100万円から200万円程度に収まるケースが多く、既存建物への後付けでは特に差が開きます。
耐用年数と更新の目安
- 税法上の法定耐用年数は建物附属設備の消火設備として8年
- メーカーが示す本体の使用期限の目安は設置から10年程度
- 消火薬剤と加圧用ガス容器は、点検結果に応じて交換が必要
使用期限を過ぎた設備は性能が保証されないため、10年を目安に薬剤交換か本体更新を計画しておくと急な出費を避けられます。
設置費用を抑えるポイント
- 建物規模とフロア形状から1型・2型のどちらが少ない台数で済むか比較してもらう
- 複数メーカーの製品で相見積もりをとる
- 表示灯の電源をとりやすい位置に配置して配線工事を短くする
- 消防設備点検とあわせて依頼し、点検と工事の業者を一本化する
パッケージ型消火設備の設置・点検は消防119にお任せください
パッケージ型消火設備は工事費を抑えられる反面、用途・階数・面積の条件を一つでも外れると設置が認められず、設計のやり直しになる設備です。また設置後も消防法にもとづく6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検が義務付けられており、消防署への点検報告も必要です。
消防119では、次の業務を一括してお引き受けしています。
- 屋内消火栓とパッケージ型消火設備のどちらが適しているかの現地調査と比較提案
- 1型・2型の選定と必要台数の配置設計
- 所轄消防署との事前協議、着工届・設置届の作成提出
- 有資格の消防設備士による設置工事と消防検査の立ち会い
- 設置後の定期点検、薬剤交換、本体更新
「屋内消火栓を指導されたが費用を抑えたい」「テナント入居で消防設備が必要になった」といったご相談にも、有資格者が法令にもとづいて最適な方法をご提案します。見積もりは無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

