誘導灯の設置基準は、消防法施行令第26条と消防法施行規則第28条の2・第28条の3で定められています。しかし条文は専門的で、「自分の建物に必要なのか」「どこに何台つければよいのか」が分かりにくいのが実情です。この記事では、設置義務の考え方・A級B級C級の有効距離・取付高さ・免除条件を早見表にまとめ、事務所や工場などの具体例とあわせて解説します。
誘導灯とは?消防法で設置が義務付けられる理由と種類
誘導灯の役割
誘導灯とは、火災や停電のときに建物内の人を安全に避難口まで導くための防災照明です。非常電源(内蔵バッテリー)を備えているため、停電しても一定時間は点灯し続けます。避難経路を知らない不特定多数の人が利用する施設ほど、誘導灯の重要性は高くなります。
同じ防災照明でも非常灯は建築基準法で定められた「足元を照らす明かり」であり、誘導灯は消防法で定められた「避難口や進む方向を示すサイン」という違いがあります。
誘導灯の種類
誘導灯は設置場所と目的によって次の4種類に分かれます。
| 種類 | 表示内容 | 設置場所 |
|---|---|---|
| 避難口誘導灯 | 緑地に白のピクトグラム | 屋外や階段に通じる出入口の上部 |
| 通路誘導灯 | 白地に緑の矢印 | 廊下・通路の曲がり角や分岐点 |
| 階段通路誘導灯 | 足元を照らす照明型 | 階段・傾斜路の踊り場など |
| 客席誘導灯 | 足元の照明型 | 劇場・映画館などの客席通路 |
設置義務のある建物
消防法施行令別表第一に定められた防火対象物(消防法で火災予防の対象となる建物)には、用途によって次のように設置義務の範囲が異なります。
- 建物全体に設置が必要な用途:劇場・飲食店・物販店・ホテル・病院・福祉施設・地下街・これらを含む複合用途ビルなど、不特定多数や避難に時間がかかる人が利用する建物
- 地階・無窓階・11階以上の階のみ必要な用途:共同住宅・学校・事務所・工場・倉庫・駐車場など、主に関係者が利用する建物
無窓階とは、避難や消火活動に使える大きさの窓が足りない階のことで、地上階でも該当する場合があります。
設置基準を早見表で解説|距離・高さ・A級B級C級
A級・B級・C級の違い
誘導灯の等級は表示面(ピクトグラムが描かれたパネル)の大きさで決まります。大きいほど遠くから視認できるため、設置できる間隔も広がります。
| 等級 | 表示面の縦寸法 | 主な用途 |
|---|---|---|
| A級 | 40cm以上 | 大規模店舗・駅・ホール |
| B級 | 20cm以上40cm未満 | 中規模の店舗・ビル |
| C級 | 10cm以上20cm未満 | 小規模店舗・事務所 |
B級はさらに、表示面の明るさが高いBH形と標準的なBL形に分かれます。
有効範囲(歩行距離)の早見表
誘導灯には「この距離までなら見える」という有効範囲が定められており、避難経路のどこにいても必ずどれかの誘導灯の有効範囲に入るように配置します。
| 等級 | 避難口誘導灯 | 避難口誘導灯(矢印付き) | 通路誘導灯 |
|---|---|---|---|
| A級 | 60m | 40m | 20m |
| B級(BH形) | 30m | 20m | 15m |
| B級(BL形) | 20m | 15m | 15m |
| C級 | 15m | 15m | 10m |
避難口誘導灯は矢印を付けると有効範囲が短くなる点に注意してください。
取付高さの基準
| 種類 | 取付位置 |
|---|---|
| 避難口誘導灯 | 避難口の上部またはその直近 |
| 通路誘導灯 | 床面またはその直近(目安として床面から1m以下) |
| 階段通路誘導灯 | 踏面や踊り場を1ルクス以上の明るさで照らせる位置 |
かつて定められていた「床面から2m以下」といった高さの上限は現在の法令にはありませんが、間仕切りや看板で見えにくくなる視認障害がある場合は追加設置を求められることがあります。所轄消防署によって運用に差があるため、設計段階で事前相談しておくと安心です。
誘導灯の設置が免除される条件とは?事務所・工場の具体例
免除の基本的な考え方
誘導灯は「避難口が見えていれば不要」という考え方で、消防法施行規則第28条の2に免除条件が定められています。居室のどこからでも避難口を見通せて、かつ歩行距離が一定以下であることが共通の条件です。
| 階の区分 | 条件 | 歩行距離の上限 |
|---|---|---|
| 避難階(直接地上に出られる階) | 居室から主要な避難口を容易に見通せる | 不特定多数が利用する用途は20m以下、それ以外は30m以下 |
| 避難階以外の階 | 居室から避難階段の出入口を容易に見通せる | 不特定多数が利用する用途は10m以下、それ以外は20m以下 |
いずれも地階と無窓階は免除の対象外です。免除となった場合でも、避難口の位置を示す誘導標識(電源不要のプレート型の標識)の設置が必要になるケースがあります。
事務所の場合
事務所は別表第一の(15)項に該当し、地階・無窓階・11階以上の階以外は原則として誘導灯の設置義務がありません。ただし次の点に注意が必要です。
- 1階に飲食店や店舗が入る複合用途ビルは(16)項イ扱いとなり、建物全体に設置が必要になる
- 窓が少ないテナントビルの中層階は無窓階と判定される場合がある
- 100平方メートル以下の小さな居室でも、無窓階であれば免除されない
工場・倉庫の場合
工場は(12)項、倉庫は(14)項で、事務所と同じく地階・無窓階・11階以上が対象です。工場は窓のない大空間が多く、無窓階に該当して設置が必要になるケースが少なくありません。また、天井が高い建物では有効範囲内でも視認しにくいことがあるため、大型のA級を選ぶか台数を増やす判断が求められます。
階段通路誘導灯・避難口誘導灯の設置位置と60分型の基準
避難口誘導灯の設置位置
避難口誘導灯は次の出入口に設置します。
- 屋内から直接地上へ通じる出入口
- 直通階段の出入口
- 上記に通じる廊下や通路への出入口
- 防火戸で区画された部屋から廊下へ出る出入口
避難口の上部に設置し、扉が開いても隠れない位置にすることが基本です。
階段通路誘導灯の設置位置
階段や傾斜路には、踏面と踊り場を照らす階段通路誘導灯を設置します。各階の踊り場に設置し、床面で1ルクス以上の明るさを確保するのが基準です。建築基準法の非常用照明を設置している階段では、要件を満たせば階段通路誘導灯を兼ねることができます。
20分型と60分型の違い
誘導灯の非常電源は、停電後も20分以上点灯できる容量が標準です。しかし避難に時間がかかる大規模建物では、避難階に通じる階段や傾斜路などの重要な経路に60分以上点灯できる長時間定格型が求められます。
| 対象となる建物 | 規模の目安 |
|---|---|
| 大規模な建物 | 延べ面積5万平方メートル以上 |
| 高層の建物 | 地階を除く階数が15以上で延べ面積3万平方メートル以上 |
| 地下街 | 延べ面積1,000平方メートル以上 |
これらの建物では、避難経路の途中にある通路誘導灯や避難口誘導灯も60分型が必要になります。
設置工事・点検・設置届は消防119にお任せください
誘導灯の設置基準は用途・階数・面積によって判断が変わり、所轄消防署との事前協議も欠かせません。等級の選定を誤ると有効範囲が足りず、消防検査で指摘を受けて追加工事になることもあります。
消防119では、次の業務をワンストップで対応しています。
- 現地調査と図面による誘導灯の配置設計
- 消防署への事前相談と設置届・着工届の作成提出
- 誘導灯の設置工事と消防検査の立ち会い
- 設置後の消防設備点検
新築・テナント入居・用途変更のタイミングで「誘導灯が必要かどうか分からない」「免除の条件に当てはまるか確認したい」といったご相談も歓迎です。有資格者が法令にもとづいて判断し、無駄のない設置計画をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。

